uの芸術鑑賞日記

コンサートや美術展で思ったことを備忘録として。

「虫めづる日本の人々」サントリー美術館

六本木、サントリー美術館の企画展「虫めづる日本の人々」。7/22から9/18まで。

作品は全て撮影禁止。
暑い日中を避けて夜に行ったおかげで人も少なく、ゆったりと鑑賞できた。

まず最初に展示されていたのがきりぎりす絵巻。
遠目に見ると普通の絵巻物なのだが、よく見ると着物を着た人の顔が虫になっている。不思議と表情も豊かに見えて、可愛らしい。
そして少し進むと伊藤若冲の素絢帖の白黒のコントラストが目を引く。
一番の見どころはポスターにも出ている、同じく伊藤若冲の菜蟲だろうか。知っているような虫から、こんな生き物いたっけ、というようなものまで色々描かれていて観ていて飽きない。

しかし、その他に関して言えば、全体的にとりとめがないという印象。
夏だから虫、というので企画が持ち上がったのだろう。それに合わせて虫に関連するものを集めてきたのだろうけれど、まとまりがない。
和歌に登場する虫、着物や漆器、ガラスなどにデザインされた虫、中国の影響を受けた蝶が入った絵画、デザイン含め浮世絵のなかの虫、さらには博物画に近いものまで。
カニが入っているのもちょっと違和感があったり。

「虫めづる」というのは虫を愛で楽しむ人々なのか、デザインとして愛ずることなのか。
せめてそこだけでもはっきりさせたらもっとテーマが絞り込めて面白い展覧会になったのではないのだろうか。

「ル・グラン・ガラ2023」2023/08/02 東京文化会館

パリ・オペラ座のガラ、8月2日のソワレ公演。
プログラムはこんな感じ。

男女2人の演目ですべてが構成されたプログラム。比較的地味な演目が続く。
ダンサーが何十回と回ってそれに合わせて観客も拍手するような、ガラによくある派手な場面がほとんど盛り込まれていない。それでも十分満足させてくれるところ、さすがオペラ座

今回の演目だが、華やかで惹き込まれたのはマノンとオネーギン。オネーギンは観たことがないのでいつかちゃんとしたセットで観てみたい。
全体の構成としては、コンテンポラリーが第1部と第2部で一つずつ。良いバランスだったように思う。現代ものはあまり好みではないが、意外なことに"In the Middle Somewhat Elevated"が良かった。

公演が終わり、ソワレはやっぱり良いなあと思いながら外に出た途端、一気に現実に引き戻される。9時だというのにまだ蒸し暑い。この暑さ、なんとかならないものか。

「オペラ座ガラ ―ヌレエフに捧ぐ―」2023/07/27 東京文化会館

真夏の暑さのオペラ座ガラ公演。

音源なのはやっぱり残念。日本のオーケストラで良いので入れて欲しいところ。
客入りは6-7割くらいだろうか。満席にならない状況で更にオーケストラのために値上げすると客が集まらないのだろうか。せっかくなら生のオーケストラで観たいという人も多いと思うのだけれど。

全体として感じたのは、エトワールの安定感。
こんな暑い中、時差もあるところからやってきて舞台をこなすのは簡単なことではないのだろう。才能だけでなく経験値の差もあるのかもしれない。

バレエ「L'Histoire de Manon」2023/07/15 オペラガルニエ

スタッフ
振付 Kenneth MacMilan
音楽 Jules Massnet 
監督 Pierre Dumoussaud

キャスト
マノン Ludmila Pagliero
デ・グリュー Marc Moreau
レスコー Francesco Mura
(L'Histoire de Manon-Opéra national de Paris)

マスネのバレエ、マノン。
振付はケネス・マクミラン。最終日に鑑賞。

行く前はそんなに乗り気ではなかったのだけれど、行って良かった。
美しい舞台を、ガルニエの舞台で観られてもう大満足。オーケストラも良いだろう、マスネの音楽が素晴らしい。日や席を変えて、何度でも観たいと思えるバレエだった。


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バレエ「Signes」2023/07/13 オペラバスティーユ

スタッフ
振付 Carolyn Carlson
音楽 René Aubry
衣装・セットデザイン Olivier Debré 

キャスト
Hannah O'Neill
Germain Louvet

(Signes-Opéra national de paris)

7月末にはガラ公演で来日予定のオニール八菜出演。

オリビエ・ドュブレ(Olivier Debré)の描いた7枚の絵に触発されて制作された作品。パッと色が切り替わるなど、色彩的には美しい。
終わったあとにはスタンディングオベーションの嵐。

音楽が機械的な感じで繰り返しが多く、しかも音源だったのが何より残念だったところ。
バレエを見慣れた人には楽しめるのだろうか。


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オペラ「Romeo et Juliette」2023/07/11 オペラバスティーユ

スタッフ
脚本 Jules Barbier, Michel Carré
指揮 Carlo Rizzi

キャスト
ジュリエット Pretty Yande
ロミオ Francesco Demuro

(Romeo et Juliette -Opéra national de paris)

グノーのオペラ。いかにもフランスっぽい、独特な音楽。
くるくると回る階段の演出が面白い。途中で入るバレエの部分は美しい。どういう意図なのかよく分からなかったけれど...

オペラなのだから仕方ないというえば仕方がないけれど、毒を飲んだあとに2人が朗々と歌い上げていて、原作ってこんなんだったっけと思わずにいられなかった。


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ジュリエット役のプリティ・イェンデ(Pretty Yande)は14日の革命記念日エッフェル塔でのコンサートにも登場。
声はとても綺麗。しかし、かなりかなりガタイが良いので残念ながらジュリエットという感じはしない。ロミオと並ぶと余計にそれが目立つ。ベッドシーンなどはそれが気になってそこにしか目がいかない。
それでも良いものを見せてもらったというふうに思わせるところ、歌手の力量と演出が素晴らしかったのだと思う。

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「フランチェスコ・メーリ プレミアムコンサート」2023/06/28 東京オペラシティコンサートホール

指揮 フランシスコ・イヴァン・チャンパ
演奏 東京フィルハーモニー交響楽団

どちらかといえば指揮者目当て。プラシド・ドミンゴのコンサートで聴いて以来、密かに応援している。

パレルモ・マッシモ劇場の公演で来日した2人のコンサート。
指揮者との相性が良さそうに感じた。曲が終わるとハグしたりして、本当に仲が良さそう。
年やキャリアも違う友情って外国ではよく見かける気がするけど、見ていてとても微笑ましい。


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映像で見ている感じ、自分を抑えている感じがしてあまり好みではないと思っていたメーリだけれど、映像よりはるかに良かった。客の熱気に押されてどんどんメーリが乗ってきた感じ。
1人でずっと歌っているわけにもいかないので、間奏曲のような感じでオーケストラのみの演目が入る。指揮者に信頼が置けないとなかなか組めないプログラムだと思う。
馴染みのないマチネやラロだけれど、楽しませてくれた。

驚いたのはアンコール。メーリが曲名を言っただけでどよめきや拍手。私にとってこんなコンサートは始めてだった。

それにしても、コロナ前の状況を知らないのだけれど、席が埋まってなくて勿体無い。