uの芸術鑑賞日記

コンサートや美術展で思ったことを備忘録として。

「Ballet Muses -バレエの美神2023-」2023/11/23 東京文化会館

バレエの美神2023のBプログラム。

ボリショイ、ミハイロフスキー、マリインスキーとロシア系のダンサーが多い。

プログラムの変更も多め。

全体的に音源が良くなかったような...
ガラ含めマノンは何度か見ているけれど、音から感じられるフランスものっぽさが全然なかった。プログラム変更が続いたせいだろうか。

遊び心があって面白かったのは101。その名のとおり、聞こえてくる男性の声に合わせて次々に繰り出される101個の動きは見ていて楽しい。

最初に出された紹介スライドのようなのは雰囲気が台無しなのでやめてほしい。

「パリ ポンピドゥーセンター キュビスム展―美の革命 ピカソ、ブラックからドローネー、シャガールへ」国立西洋美術館

国立西洋美術館キュビズム展。2023年10月3日から2024年1月28日まで。
改修工事に入るパリ、ポンピドゥーセンターからの作品が多数。チケット代は2,200円。

キュビズム展ということで自分の好みに合わない作品が多いのを覚悟で向かう。意外に好きな作品があって良い意味で驚かされた。
ジョルジュ・ブラックが好きだということが発見できたことが自分的には一番の収穫。どの作品も素敵だったのだけれど、ピカソと共にキュビズムを共に模索していく過程での作品はどちらがどちらの作品か区別がつかないほどだったのには驚いた。

第一次世界大戦が勃発すると、キュビズムはドイツの影響を受けたものでフランスのものではないとして揶揄されたり非難されたりしたそう。そこでキュビズムを擁護したのがアポリネールキュビズムの歴史も知ることが出来て勉強になった。

オペラ「シモン・ボッカネグラ」2023/11/15 新国立劇場

新国立劇場2023シーズン新制作のオペラ、シモン・ボッカネグラの初日。

newsdig.tbs.co.jp

スタッフ
指揮 大野和士
演出 ピエール・オーディ

キャスト
シモン・ボッカネグラ ロベルト・フロンターリ
アメーリア イリーナ・ルング

ヤコポ・フィエスコ リッカルド・ザネッラート

ガブリエーレ・アドルノ ルチアーノ・ガンチ
パオロ・アルビアーニ シモーネ・アルベルギーニ
管弦楽 東京フィルハーモニー交響楽団

新国立劇場 シモン・ボッカネグラ

日本ではあまり上演機会が多くはないというシモン・ボッカネグラ
シモンが娘のマリアと偶然再会するのは良いとしても、更にフィエスコが引き取って育てていた娘が実は探していた孫娘だったというそのあらすじはそんなことあるかと思わずにいられない。

演奏は始まってしばらく、オーケストラも歌手も小さくまとまっていてどうしようかと思った。
第二幕の終わりあたりからアドルノ役のルチアーノ・ガンチが調子を上げてきて、それに合わせてアメーリアもよくなっていった印象。
今回の一番、というか今シーズンの新国立劇場一番の目玉であろうシモン・ボッカネグラ役のロベルト・フロンターリだが、何だかいまいちだなあと思って見ていた。それでも最後の第四幕は調子が出ていて存在感もあって、表現豊かで良かった。

あとはオーケストラと合唱にもっと音の厚みがあったらなあ。

日越外交関係樹立50周年記念オペラ「アニオー姫」 2023/11/04 昭和女子大学人見記念講堂

日越外交関係樹立50周年記念オペラ「アニオー姫」の日本プレミア公演。初演は9月、ハノイオペラ座で。

www3.nhk.or.jp

キャスト
アニオー姫 ダオ・トー・ロアン
鈴木宗太郎 小堀勇介
占い師 ファム・カイン・ゴック
オーケストラ ベトナム国交響楽団

制作
総監督 本名徹次
作曲 チャン・マィン・フン
演出 大山大輔
(日越外交関係樹立50周年記念オペラ アニオー姫)

オペラというよりもミュージカルに近い感じだった。
ひとつにはあらすじがそう思わせたのだろう。宗太郎とベトナム国王の娘のアニオー姫との恋愛が美しくロマンチックに仕立て上げられすぎている感がある。日越外交関係樹立記念なので仕方ない部分もあるとはいえ、"ありがとう"のあまりの連呼に説教くささを感じてしまう。
もうひとつ、歌手が歌う時は必ずといっていいほど正面を向いていたこと。これはあえての演出か、それとも歌手の力量不足故か。

更にはこういうときに出てくる日本文化ってふるさと(今回はねんねんころりだったけれど)しかないのかなあと思ったり。

いろいろと思うところはあったけれど、新作オペラを安いチケットの値段で聴けるのは貴重な機会。
ベトナム国交響楽団のオーケストラの音がアジアっぽくて異国情緒を感じさせてくれた。

「まいにち 鹿児島睦展」PLAY! Museum

立川市にあるPLAY!Museumで10月7日から開催されている「まいにち 鹿児島睦展」。

もともと鹿児島睦という人を知っていたわけではなく、ポスターが可愛らしかったのでチケット1800円はちょっと高いなあと思いながらも行ってみた。
写真撮影可能。午前中で空いていたし、200点あまりの作品がケースに越しでなく見ることができたので、それなりに満足いく展示だったと言える。
彼の器からインスピレーションを受けて書かれたという絵本の文章は正直なくても良かったかなというところではあるが。

鹿児島睦の作品、色彩や植物のデザインは自分好み。でも動物の絵は特に目の表情とかがちょっと可愛らしすぎて、あまり好きではなかった。

器が並んでいるところではそんなに感じないのだけれど、彼がデザインを手がけた展示のコーナーは商業的な雰囲気が漂う。現在は販売中止と書いてあるけれど、最後のショップで売っているんだろうな、とかどうしても考えてしまう。こういう雑念が入ってしまうような展示の仕方は鑑賞する上ではちょっと残念。
この展示に限らず、美術展は図録とポストカードくらいで十分だと思うのだけれど。

太陽劇団「金夢島 L’ÎLE D’OR Kanemu-Jima」 2023/10/21 東京芸術劇場 プレイハウス

東京芸術祭2023のプログラムの一つ、Théâtre du Soleil(太陽劇団)22年ぶりの来日公演。
2021年に日本で初演の予定だったが、新型コロナウイルスにより延期。今回が満を持しての日本公演となる。創設者のアリアーヌ・ムヌーシュキンも来日。

tokyo-festival.jp

舞台はコーネリアの夢の中、日本のような「金夢島」。そこでは市長主導のもと、国際演劇祭の準備が行われている。
様々な国からやってくる演劇人たちに、市長の座をめぐる政治対立、更にはカジノ誘致。それらが入り乱れて話が進んでゆく。

次々と入れ込まれる、パンデミック習近平、香港、ハマス、ブラジルマフィアなどなどの世界情勢。
演者はマスクのようなストッキングのようなものを被っており、表情や顔立ちがほとんど分からない。それら入り乱れる情景が多言語で場面転換しながら次々と演じられていく。そしてその舞台は日本のような、日本でないような、不思議な場所。

3時間以上の舞台。ほぼほぼ意味が分からなかったといっても良いのだけれど、
クセになる面白さのある不思議な舞台だった。
最後は一応まとめのような感じで結末がついているので後味も良かった。

We will meet againの音楽が流れるなか、皆で一斉に能を踊り、その背景には3匹の鶴、というのはシュールで面白かった。この鶴、ちょっとアルベールビルオリンピックの開会式を想起させる。きっとフランス人はこういうのが好きなんだなあ。

olympics.com

すごいと思ったのが、台詞の聞き取りやすさ。大声でしゃべっているわけではないのにしっかりと観客に届く発声。
メイン言語はフランス語だが、多言語での上映。きっと発声が良いのだろう、どの言語も自然で聞き取りやすい。
それと、俳優なのか歌手なのか分からないけれど、歌が素晴らしく綺麗だった。

上演後にはアフタートークも。
熱心な観客が多かったようで、ほとんどの観客が残り、次々と質問が出る。
本番後にもかかわらず観客の質問に饒舌に答えるアリアーヌ・ムヌーシュキン。80歳を超えてなお、声も若くユーモアにも溢れたその人柄も伺いしれて貴重な機会だった。

ローマ歌劇場「トスカ」2023/09/24 東京文化会館

4年ぶりの海外からの引越公演。しかもゼフェレッリの演出。来ている皆さん待ちに待った、という感じ。チケット代もかなりの高額なのに9割ほどの席が埋まっていただろうか。

演出・美術 フランコ・ゼフェレッリ
指揮 ミケーレ・マリオッティ
フローリア・トスカ ソニア・ヨンチェヴァ
マリオ・カヴァラドッシ ヴィットリオ・グリゴーロ
スカルピア ロマン・ブルデンコ

NBS公演ローマ歌劇場「トスカ」

舞台セットの豪華さは言うまでもない。背景にいる登場人物も多くて、合唱もオーケストラも響きが多層的。
第二幕の書斎のセットが素敵だった。

最初からパワー全開のグリゴーロ。最初はあまり調子が出ていないように見えたトスカ役のソニア・ヨンチェヴァだったけれど、相手に負けじと頑張ったのか調子が上がってきたのか、第二幕あたりから良くなっていった。

2人のアリアは、トスカのアリアって意外と長くてこんなに美しかったのだと思わせてくれた。

それに比べてスカルピアがちょっと存在感が薄めだったといえる。スカルピアの役は本当に難しいと思う。
演奏会形式ではあったけれど4月に同じく東京文化会館ブリン・ターフェルのスカルピアを聴いてしまっているので、それに匹敵するものにはそう簡単には出くわせないか。

最後のカーテンコールまでご機嫌のグリゴーロ。高いチケットだったけれど、やっぱり行ってよかった。

良い席で一度見るのも良いけれど、何度も見れるように安い席もなんとか用意してほしい...